伊豆ヴェルディ記念合唱団では11月5日と12月3日のコンサートで林光編曲の「日本抒情歌曲集」から5曲を選んで合唱する。
既に「箱根八里」と「ゴンドラの唄」はこのブログで取り上げ、今回は「この道」について感じたことを書くが、良い動画はなかったので、そのうち伊豆ヴェルで完璧に歌ってYouTubeにアップしたいと考えている。
最初の絵は東山魁夷の初期の作品の「道」であるが、歌の世界とは異なるものの、しっとりとした情感があふれる素敵な作品だと思う。誰にもそれぞれの「道」があるのかも知れない。

北原白秋の作詞、山田耕筰の作曲になる「この道」は北原白秋が晩年に旅行した北海道と、母の実家である熊本県南関町から柳川までの道の情景が歌い込まれているとのことだ。時計台と言えば札幌だから全て北海道の道かと思ったがそうではないらしい。
この道この道はいつかきた道
ああ そうだよ
あかしやの花が咲いてる
あの丘はいつか見た丘
ああ そうだよ
ほら 白い時計台だよ
この道はいつかきた道
ああ そうだよ
お母さまと馬車で行ったよ
あの雲もいつか見た雲
ああ そうだよ
山査子の枝も垂れてる
歌詞の中で「あかしや」とは北アメリカ原産のマネ科ハリエンジュ属の「ニセアカシア」のことで、「ニセ」とあるからには本物のアカシアがあるのだが、アカシアというとマメ科ネムノキ亜科アカシア属の樹木で「ミモザ」とも呼ばれ、春先に黄色い花を付けるオーストラリア原産の「ギンヨウアカシア」や中国、朝鮮半島、日本原産のピンクの花の「ネムノキ」などがある。

「ニセアカシア」は一般的には白いフジのような花をつけるが、赤紫色の花を付けるものもある。
「ニセアカシア」は明治初期に渡来し、荒地でも育ち、成長が速いので街路樹などに使われた。成長が速いのは良いが、欠点は根から芽が出て離れたところで成長し、急速に野生化する危険があることだ。良いところは「(ニセ)アカシア」の蜂蜜は癖がなく、とてもおいしいということ。
下は北海道のアカシアの並木道。大きく育ち、きれいに刈り込まれていて見事な並木だと思う。

下は「ニセアカシア」の花。伊豆高原の駅の近くの緑地帯にも野生化した「ニセアカシア」があり、カザンの庭にも黄色い葉の「ニセアカシア・フリーシア」を植えている。

3番の歌詞は白秋が生まれ育った熊本県の情景となるが、どういう馬車かは分からない。
4番も流れからしたら熊本の空かもしれないが、北海道の空も同時に表現していると言えるだろう。
中国原産の山査子(サンザシ)は北海道でも熊本でも育つだろうと思うので植物から地域を特定できない。

カザンのフランスのグルゴーニュのアトリエの庭は牧場に囲まれていて「サンザシ」と「イバラ」の生垣で仕切られていた。何故「イバラ」と「サンザシ」の生垣かというと、どちらにも刺があり、家畜が食べないからだ。
「サンザシ」の花は2月頃から春一番に咲き、それまで暗く灰色だった世界に春の訪れの兆しを感じて嬉しい気持ちになったものだ。
またサンザシの赤い実は果実酒やドライフルーツにもなる。

さてこの歌詞では「白」が基調になっている。ニセアカシアとサンザシの白い花、白い時計台、白い雲・・・であるがそれが何を意味するかは分からないものの、清明な情景であることは確かだろう。彼の名にも「白」が入っているので、好きな色は白だったのかも知れない。